▼引き戸は良いことばかりではない▲
扉はどのタイプを採用しようとお考えですか?
開き戸タイプや引き戸タイプ、様々にラインナップされています。各メーカーはたくさんの種類を用意していますので、タイプを選択しても、またその先に機能性や安全性、デザインなど検討することが多いのも、ドア選びの特徴です。
きっと選択するとき、一番に考えるのは「使い勝手が良いかどうか」ですよね。
マンションや賃貸物件ですと、住み始めたときには扉は既に付いていることがほとんどですので、何故そこは開き戸なのか?など考えることもないはず。
ただ、実際に使ってみてどうだったかは感じる部分はあると思いますので、その気持ちをぜひ間取り計画にも役立てていただきたいところです。
今回は、引き戸を選択した場合、どのような注意点があるのかお話ししたいと思います。
扉によっては生活に支障がでることもありますので、注意して選びましょうね。
▼引き戸の「引き残し」とは▼
間取りを計画する方の中には、「基本的にすべて引き戸で計画しています」という方もいます。
以前、「引き戸と開き戸の使い分け」についての投稿をしました。お互いにメリットデメリットはありますので、できればしっかりと使い分けをしてほしいなと感じます。
引き戸で計画するときに「引き残し」というものを意識しているでしょうか?
この「引き残し」という言葉を初めて聞いたというのであれば、一度確認しておくとよいでしょう。実は、意外に使いづらくなる要因になるものです。
まず、この「引き残し」とは何か?という説明をしておきます。
簡単に言うと、引き戸を開けた時に、全部がすっぽり引き切らないで、少しだけ残って止まるというのはおわかりでしょうか。
この少しだけ残った部分のことを「引き残し」といいます。
何のためにあるのかというと、単純に「手を挟めないため」に存在します。全部しまっちゃうと指を一緒にはさめてしまうというケガが過去に多かったから、進化したということですね。
さて、ではなぜこれが使いづらい要因になるのかというと。
【その分だけ狭くなるから】です。
そんなんあたり前じゃねーかという声が聞こえてきそうですが、これが結構狭くなります。一般的なドアで計算してみましょう。
まず開き戸の場合です。
通路幅の壁芯910mm-壁の厚さ125mm-ドア枠25mm×両サイド2=735mm
つまり、開き戸の一般的な間口は「735mm」程度となります。商品の規格がありますので、「程度」と書かせてもらいます。
きっとみなさんが良く通っているドアの幅はこのくらいだと思います。非常に一般的です。
では引き戸はどうなるかというと。
ドアの幅から引き残しの分を引く形になりますので、
開き戸の間口735mm-引き残し100mm=635mm
つまり、引き戸の一般的な間口は「635mm」程度ということになります。
60cm程度しか通路幅はないということになってしまいます。
これも実際は規格がありますので、引き残しが80mmの商品もあれば、120mmの商品もありますので、一概には言えませんが狭くなってしまうことは事実。
635mmと聞くと、かなり狭いと感じるのではないでしょうか。トイレで使う開き戸と同じくらいの感覚ですね。
成人の肩幅は60㎝位ですので大人が通るときに、もしかしたらぶつかってしまう人もいるのではないでしょうか。
意外と盲点になる部分ですよね。単純にデザインなどから安易に選択してはいけないということがお分かりいただけたでしょうか。
▼まとめ▼
間取り図といういうのは、通路幅に対してぎりぎりまで大きく記載してありますから、見た目には開き戸と同じ間口になっているように錯覚します。
実際に開いた状態の引き戸で引き残しの部分まで図面に描かれていれば、開き戸より幅が狭いことが理解できるかもしれません。
図面というのは設計・施工など家を作るために必要なものであって、専門用語が使われていたり、形式的に描かれていたりするものですよね。
なので素人が見ても理解できないのは当然のことです。
「ここの部分を引き戸にしたいのですが」の要望に対して、
「引き残しの分狭くなってしまいますが支障はないでしょうか?」
などのような会話をされることが私としては望ましい形と考えます。
しかし現実的には、100mmも狭くなっているということ、それに気づかず「使い勝手」だけを重視して計画してしまう人が多いということなのです。
逆に言うと、開き戸と同じ大きさにするためには100mm以上の幅を必要とするので、スライドさせる扉を加味すると、かなりの横幅が必要ということになります。
そういう気付かない不便さを、実生活に入ってから気付くことのないように、一度確認してみることをお勧めいたします。
今回は、引き戸の「引き残し」のお話をさせていただきました。
ぜひご参考にしていただければ幸いです。