◇持ち込み家具の実態、そして悲劇
今使っている家具を、新しい家でも使いたい。
そう考えている人はたくさんいます。どれを買い足して、どれを持っていくのか。経済的にも非常に重要なポイントになります。
頭の中ではこれとこれをあっちに置いて、このぐらいのものを新調してあの角に置いて…と。頭の中でイメージをしている方は多いはず。
では実際に、今使っている家具の具体的なサイズはご存知ですか?
・・・なんとか納まるはず!
これが、大きな悲劇につながっているのです。
【あと10cmだけ家具が入らない!】
結果家具が買い替えになり、捨てられます。目検討やイメージでは、こういった悲劇が起きる可能性が大きいのです。というより、現実に起きている事例なのです。
そこで、間取り図における「寸法」について知っておいてほしいことを解説いたします。
皆さんは「芯々(しんしん)寸法」と「有効(ゆうこう)寸法」という言葉をご存知ですか?たぶん業界用語ですので、知らない方はわからなくて当然です。
この「芯々寸法」と「有効寸法」という二つのワード。家づくりには重要なポイントですので、頑張って読み進めてみてください。
◇芯々寸法と有効寸法
部屋の寸法は図面でも見たし、家具も採寸したから大丈夫!
・・・しかし現実には家具が収まらない。そんなことは当たり前に起きています。
この原因は「芯々寸法」「有効寸法」の、この二つ間の行き違いによるものかもしれません。
◆「芯芯寸法」とは?
例えば、図面で「1820」という寸法が書かれていたとします。多くの人はこれをみて、部屋の大きさが1820mmなのだと錯覚します。
ですが、これは「壁の中心線から壁の中心線までの寸法」なのです。
その中心線の周りには、いくつもの建築材料が使われて、どんどん厚みを増していきます。
実際に住宅が出来上がり、最終的にメジャーを持って行って壁の寸法を測ります。すると図面に書いてあった寸法に比べて、かなり差があることに気付くのです。
壁の厚さというのは、使われる材料によってそれぞれですが、おおむね12cmほどです。
芯芯寸法が1820mmだということは、実際の部屋の寸法は1700mmでしかないと言うことです。
12cmってけっこうな誤差ですよね・・・。施工会社の人が間違えないように、「壁芯」という統一の意思で作られているため、一般の人には理解しずらい部分なのです。
このことを知らなければ、当然のように家具が納まらない現象が起きちゃいますよね。仮に納まったとしても、なんか狭い?と感じることがあるかもしれません。
基本的には図面はこの芯々寸法で記載されていますので、お間違いのないようにしてください。
◆「有効寸法」とは
これは芯々寸法と違い、壁の厚みを差し引いた「実際に使える」寸法のことです。
この寸法を知ることができれば、家具や家電のレイアウトもうまくいきます。
しかし実際の図面には、これが数字として書かれていないことがほとんどです。なので図面から自分で計算してみるか、もしくは設計担当者に聞く以外の方法は無いのです。
いちいち確認するのが有効な手段でしょう。
「これは有効寸法ですか?」と。
「有効」という言葉は、実は建築でよく聞くフレーズです。
例えば、ドアや窓の有効開口。これは実際に開けるとき最大でどのくらい開くのかということ。これも、図面に書いてある寸法と、実際の寸法は違います。
例えば引き戸だと、でが挟まらないように「引き残し」という部分ができますので、実際は扉の端端のサイズほどは開きません。
大型のものを運ぶことや車いすを使用することを念頭に入れている方は、窓やドアの有効開口も、しっかりと確認してみる必要があります。そういう風に図面を見ることができれば、少し見方が変わってくるかもしれませんね。
◇悲劇を起こさない、簡単な解決策とは?
この寸法問題。設計担当者はこのことを知らないはずがありません。ではなぜ、そんなすれ違いがおきるのでしょうか。
それは意外と単純なことだったりします。
建てる側の人が、今ある家具をそこに置きたいと『勝手に思っているだけ』だからです。
そのことを、設計する人が「知らない」からなのです。
今使っている家具を、新しい家に持ち込む予定であれば、事前に調べることは2つ。
①持ち込み家具の幅、奥行き、高さ。
②それはどこまで分解できるものなのか。
そして設計担当者に、その家具の寸法と、それをどこに置きたいかをしっかりと伝えること。
それさえ行えば、悲劇は未然に防がれます。
確実とは言えませんが、設計担当者は実際に寸法にそった家具を図面に記載することになります。図面上に記載さえしてあれば、ほとんどの場合は実際にも設置できます。
そして納まらない場合は教えてくれるはず・・・です。
お気に入りの家具が入らないという悲劇。そして後悔が生まれないことを祈っております。
お気をつけください!