◇扉の種類を考える
部屋の中にクローゼットを計画したときに、設計担当は大抵、折れ戸を計画してきます。これに対して、不思議に思ったことはありませんか?
クローゼットのドアが「開き扉」ではなく、また「引き戸」でもなく、『折れ戸』であると言うことには、何か理由がありそうですね。
今回はその理由について、説明をしていきたいと思います。
まずは、クローゼットのドアが折れ戸ではなかった場合の検証をしてみましょう。
◉例えばクローゼットのドアが「開く扉」
この場合、扉の開く方向は「収納のある側」、もしくは「部屋側に開く」と言う事は想像がつきますか?
もしも、扉が収納の中に向かって開くとき、その扉の分だけ余分に面積がとられてしまうことになります。逆に扉が外に向かって開く時にも同じく、開いた扉の分だけ余計に面積が必要になります。
その面積はデットスペースとなって、そこには物を置いたりできません。つまり、スペースに限りがある場合や、どこを使うのかを明確に決められないような、例えば子供部屋のような用途の部屋には、開き戸は不向きということになります。
玄関やキッチンのパントリー、廊下などに作られた幅の狭い開き戸収納をよく見掛けます。こちらは幅が狭い分、収納の前にある程度の空間があれば開き戸でも問題ないかと思います。
そして、扉の面積が比較的「小さい」ので、側面の壁を有効に使いたい場合、つまり棚を設置したいときなどには、開き戸が採用されることがよくあるのです。
◉「引き戸」の場合はどうでしょうか。
引き戸の場合は開く扉のような面積は必要ありませんが、「ドア自体」が収納されるスペースが必要になります。
つまり、実際のクローゼットの幅に対して、半分の幅しか開くことができません。
また大抵の場合、開くときに重なる扉は収納側のほうに設置され、そこが扉は開けるたびに動くことになります。
ということはその壁面には、物を立てかけたり、壁近くに物を置くということができないということになります。
これ、意外と不便なのです。
布団などかさばるものを入れたとき、「布団が引っかかってなかなか開かない!」なんてことはよくある話しです。
開く幅が半分にしかならないというデメリットを解消するために、3分割にした「3枚連動型の引き戸」を取り入れるのも良い工夫ではあります。この場合はクローゼット幅の2/3が開くので引き戸を採用するのであればそちらがオススメです。
引き戸のメリットは開かないほうの扉の前にベッドなどの家具も設置できるので、狭い部屋には取り入れやすい建具となっています。逆に、扉をスライドさせる場所はどこかに確保しなければいけないということが必要となることはお忘れなく。
◇折れ戸の特徴とメリットは?
では折れ戸の場合はどうでしょうか。
折れ戸は、開き戸ほどの開閉スペースは必要ありません。結果的に面積的なメリットが大きく、狭い空間にも取り入れやすくなっています。また、収納の正面の開口幅を大きくとることができるため、大型の荷物も簡単に出し入れできます。
一つ注意してほしいのは、扉は端に畳まれた状態になるので扉の厚み×2枚分、収納スペースの端がデットスペースになりやすいのです。衣装ケースなど端にビタビタにくっつけると、折れ戸が邪魔してケースが開けなくなるので気をつけましょう。
もう一点、収納は空気がよどみやすく、「カビ」が発生しやすい場所でもあります。折れ戸の多くは、横にスリット上の隙間がある「ガラリ」という扉の形状になっており、空気の取入れが簡単です。
そのほかの扉よりも、その扉自体の大きさを小さくすることができるため、軽くすることができます。軽ければ、構造はきゃしゃでよいことになるので、ガラリにしたとしても十分い強度が保たれるということなのです。
◇デメリットが少ない、折れ戸
こうして総合的にみると、クローゼットの扉は「折れ戸」であると言うことのメリットが大きいと判断されています。というより、デメリットが少ないという考え方になるのです。
小さいこどもは指を挟めるんじゃないかと思われる場合は、安全性の高い「指挟み防止の加工」がされたものもありますので、そこは設計担当に相談してみるのも良いでしょう。
ただし折れ戸は、機構が少し複雑で壊れやすい、または扉が外れやすいと言うデメリットがあります。クローゼット=折れ戸、と言う安易な考えではなく、使い勝手に着目し、扉の種類を決めていくのが良いですね。
クローゼットは折れ戸が採用されることが多いですが、他の扉ではダメということはありません。もし違った考えがあるなら、そこはぜひ設計担当者に相談してみてもよいと思います。
ご参考にしてみてください。