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新築後5年、後悔や不満がある「50%」


◇とあるアンケート結果から

新築後5年を経過した人たちを対象に、住宅に関するアンケートを取りました。

その結果。

 

「建物に不満がある」と答えた人は約50%。

内、約20%は間取りの不満だという結果です。

 

その内訳をみてみましょう。

 

◎収納が使いづらい、狭い。

部屋が広すぎる、もしくは狭すぎる。

コンセントが欲しいところにない。

スイッチが変な所についている。

窓の配置で暗すぎる、もしくは暑すぎる。

 

これが、新築して5年経って出できた不満の現実ということなのです。

 

◇そこからわかる違和感「なぜ?」

確かに、どの不満も非常にわかる気がしますよね。実際に間取り診断サービスをやっていて、多い質問がきちんと上位にランクインしている印象です。

 

ただ・・・上記の結果、なにか違和感がありませんか?

私にはとても不思議に映ります。

 

これらの失敗事例を回答している人たちは、新築する際には「ハウスメーカー」か、いわゆる「工務店」に注文しているケースがほとんどのはずです。

 

だとすれば、その間取り図はきっと『建築士』が設計しているはずですよね。

 

なのに、この回答内容のほとんどは、少し経験があれば気づくような初歩的なものばかりではありませんか?どういうことでしょうか。

 

◆もしかして、設計士の力量や経験値が不足しているということでしょうか?

 

・・・きっとそうではありません。建築の専門知識がありますし、そもそも自分だって「建物」で生活しているんですから。その上、何件もの設計を経験しており、使い勝手については身に染みているはずです。

 

では、そんな建築士が関わっているにもかかわらず、こんなにも初歩的な失敗事例が回答され、結果として多くの不満があるのは、どうしてなのでしょうか。

 

◇違和感から導き出した答え。食い違い。

実は、その違和感の答えは明白です。

 

【時間が足りなく、お互いの意思疎通が取れていなかった】

 

これに尽きるのです。

 

間取り図を製作する側の「建築士」と、依頼する側の「建て主」には、とても多くの食い違いがあります。

 

<食い違いその1~住宅の考え方>

建て主にとって見ると、住宅は一生に1度の買い物。

建築士にとって見ると、住宅は仕事で携わる多くの物件のうちの1件に過ぎない。

 

<食い違いその2~間取り図>

建て主にとって見ると、間取り図自体が始めて見るもので、全然わからないところからスタート。

建築士にとって見ると、毎日触れているものであって、そもそも見方も内容も全て把握している。

 

この食い違いは、とてつもなく大きな物なのです。

 

◇「食い違い」が巻き起こすストーリー

最初の打合せで、まずは建て主の要望を確認します。

 

後日、建築士からいきなり「とりあえずのプランを立ててみました」と、間取り図を見せられます。・・・ピンと来るはずがありません。最初は誰もが知識がないのですから。

 

建築士は笑顔で続けます。「1週間後にまた来ますので、気になるところがあれば言ってくださいね!」・・・気になるところといわれましても。

 

そこから、必死で調べます。インターネット、インスタ、ピンタレスト。友達から、先輩から。そしてわかるところだけを検討し、1週間後に何とかそれを伝えます。

 

次の週、「直しました」と建築士。・・・確かに直っている。直っているけども、これでいいのか?そしてまた建築士は笑顔で続けます。「他になければ、1週間後にお見積もりをお持ちします。」

 

「先生!わからないところがわかりません!」という状態そのものです。

 

一緒になって1から書き上げるのであれば、もしかしたら順番に理解できるかもしれません。ですが実際は「基準となるレイアウト」があり、それを組み替えて提案していることが多いのです。

 

結果、ものすごいスピードで「業務」としての間取り図が作成され、思い入れのない図面が建て主に手渡されます。

 

そんなものすごいスピードで把握できるわけもなく、知識は追いつかず、気がつけば確定までのカウントダウン。そして時間切れ。依頼する側がなんとなく理解できて来た頃には、すでに着工しているということになってしまうのです。

 

◇出来上がって気付く「後悔」

出来上がった当初はきれいに見えていた建物も、使っていくうちにいろいろ見えてきます。

 

そして、あのアンケート結果になるわけです。

「使いずらい。広すぎる。コンセントが遠い。妙に暑い。」

 

それはそうでしょう。

図面で描けない部分も含め、経験を語りながらセッションする。そしてお互いにイメージを膨らませながら作っていくべき、大事な大事な「間取り図面」。それを限られた少ない時間の中で決定するなんて、土台無理な話なのですから。

 

本来であれば、建築士はそれを補助する役割なはずなのですが、何せほかの物件もあるので時間がない。「検討しておいてくださいね」という伝家の宝刀が登場するわけです。

 

それに気づいたとしても、もう後の祭り。建物は完成してしまっているのです。

時すでに遅し。後悔と不満。それはその住宅が寿命を迎え、壊されるまで続きます。

 

◇本来は複数からのアドバイスが◎

建築は途方もなく広い分野です。そして、間取り作成作業には感情も入り、温度差も生まれます。

「せっかくここまで来たのに、初めから??」

「まさかやり直させるわけじゃないよね??」

建築士の、そんな心の声が聞こえそうになると、妥協を考えてしまいます。人間ですから。


本当は、ある程度プランが決まってきたら、複数人のプロに意見を求めるのがベターです。経験のある建築士であれば、少し見るだけでそれぞれの観点から弱点を付いて行くことができます。それを少しでも多く盛り込むのが、「食い違い」の有効な防止策になるということです。


そのバックアップ体制が当たり前になれば、きっと50%もの人間が不満に持つことは少なくなっていることでしょう。

 

確かにいくらかのお金は発生したとしても、将来の住まいへの投資と考えれば価値のあるものだと考えることもできる気がします。

 

あなたはこのアンケート結果、どう感じましたか?