◇よくある提案、失敗の入口
設計担当から、こんな提案をされることがあります。
「とりあえず詰め込むだけ詰め込んで、オーバーしたら削って行きましょう!」
この考え方、非常に危険です。この考え方で、多くの人たちが後悔をしています。
そのプロセスをお話ししていきます。
マイホームを計画しようとしている人にとって、当然たくさんの憧れがあります。一生に一度の大きな買い物ですから、当然の話です。
家を建てた人に話を聞いて、インターネットで調べて、SNSで情報をもらって。
そうしている内に、頭の中には「素敵な家」のイメージができてきます。
そして初めての打ち合わせ。そこで設計担当者は、そんな提案をしてくるわけです。
今まで調べたすべてを要望として伝えていき、その図面が現実のものとなるのです。
きらびやかな新居が脳裏に刷り込まれます。もしかしたら高くなってしまうかもしれない。でも、もしかしたら予算内に収まるかも知れない。
そんな淡い期待が心を支配します。
ですが、肝にめいじてください。予算をオーバーしないことは、ありません!
◇スペックを落とすという地獄の始まり
後日、実際に見積もりが来ます。そして当然のごとく予算オーバー。淡い期待が崩れ去ります。
そこから始まるのは、設計図から「スペックを落としていく」という地獄のような作業です。
最初の期待が大きければ大きいほど、「諦めている」「妥協している」という感覚は強くなっていきます。そんな作業が面白いはずもありません。
だんだんと、間取りづくりが楽しくなくなっていくことになります。そして、最終的に出来上がった間取りを見てこうおもうことになります。
「なんか、安っぽいものになっちゃったな。」
これが、多くの人が経験する後悔の事例なのです。
◇設計は順番が肝心!どうすればよいの?
ではどうするべきだったのでしょうか。どうすれば、良い間取りになっていたのでしょうか。実はこれには、コツがあります。
それは、「最低限の条件からスタートする」というものです。
大きさも、設備もキッチンもユニットバスも。すべてを「最低限」で計画してみるということです。
間取りつくりを「最低限」から出発していくと、おそらくある程度思い描いていた「予想通り」の見積もりが待っています。そしてそのあとに、そこに肉付けをしていくという作業を行っていくのです。
そうすることで、「これも足して大丈夫なの!?」というような、逆の感情が得られることになり、どんどんと間取りが良くなっているという感覚で進めていけることになるのです。
もしもきらびやかなイメージからスタートし、削って削ってゴールしたものと同じ間取りだったとしても。
得られる満足感は、まったう違うものになるというのは想像できるでしょうか。
いったん脳裏に焼きついたきらびやかな世界のせいで、どんどん妥協している感覚により、安っぽい建物になっていく気がしてしまうのに対し、どんどんと良いものを取りいれて完成することになるわけです。
同じゴールでも、プロセスが違うだけでこんなにも違うもの。人間ってそういうもんなんです。
重要な部分なので、再度ご説明いたします。
間取り設計順番の正解は、まず最低限のものでまず組み立ててみることから始めることです。そして、予算上は高くなるかもしれないと過大評価しておくことです。
それからコストを計算して、少しずつグレードアップしていく。そうすると、不思議と満足感は得られます。満足のいく建物ができあがります。
それが良い設計のコツ、鉄則というものなのです。
間取りつくりは本来楽しいものでなければいけません。買い物はそういうもののはずです。これからの生活が楽しいものになるためのスタート地点なのですから。
順番を間違えることなく、しっかりと前に進んでいただければと思います。
ぜひご参考にしてみてください。