▼WICは魅力的?▲
新居の計画をするとき、無駄な行き来が少なくなるような間取りを考えると思います。
いわゆる動線計画のことです。
動線計画とは家事動線や衛生動線、来客動線など様々あります。その中でも家事動線を特に意識した家づくりをする方が多くみられます。
共働き家庭や、育児中で時間が限られている家庭が増えてきて、如何にして家事を効率よく、楽にできるかが必要だからです。
そこを検討したとき、洗面・脱衣室の隣に「ウォークインクローゼット」が配置されている間取りが見られます。
洗面脱衣室で洗濯をして、そのままそこで部屋干しをする。そしてそこでたたみ、そのままウォークインクローゼットに収納する。
これなら収納と洗面・脱衣室間の距離が短く、短時間で洗濯物を洗う→仕舞うまでこなせます。家事動線だけ考えれば、非常に効率が良いものですね。
世の中の家庭状況が変化し「回遊動線」という言葉ができてから、このような間取りは少しづつ増えてきました。
これは一見理想的な動線計画で、主婦にとっては羨ましいもののように感じます。
ですが【本当にそうでしょうか?】
何か後悔を生むようなマイナスになってしまうことはないでしょうか?
今回は、洗面とウォークインクローゼットを隣り合わせるデメリットについて解説します。
▼敵は「ジメジメしたもの」▲
WICと洗面・脱衣室の隣接。快適となりそうな家事動線の計画ですが、一つ問題が発生するとしたら何でしょうか?
この間取りのデメリットで考えなければいけない、最も重要なポイント。それは・・・
【湿気】です。
もちろんご存知だと思いますが、脱衣室という部屋は浴室とつながっているため、湿気が多い部屋の一つです。
とはいえ基本は浴室に排気ファンがついているため、空気はそちらに流れるので問題はありません。
家の中というのは、人が心地よく生活するため、家の寿命を長くするために、空気の流れを考えて換気システムが導入されています。
湿気が多い場所や臭いが発生しそうな部屋は排気がメインであり、新鮮な空気を必要とするリビングや部屋は給気などといったように換気は考えられて設置されています。
しかし、湿気が多い浴室・脱衣室と湿気の要らないウォークインクローゼットを隣接させるとどうなりますか?
ウォークインクローゼットに浴室の湿気は来ないよね?と少し不安になりますが、単純に考えると、湿気を含んだ空気がウォークインクローゼットに来なければよいだけの話。
そこを徹底させることができれば不安は解消されます。
ですが、こんな場面はないでしょうか?
気を付けなければいけないパターンを2つ紹介しましょう。
◆パターン1
《寒いので、換気扇を止めてお風呂に入った》
この場合、お風呂に向かう湿気の流れは止まり、近くを滞留します。
結果として、その近くにあるウォークインの中にまで湿気が向かうことになります。そして、湿気を含んだ収納物は、カビが生えることになります。
衣装ケースを積み重ねて置いていたりすると、その裏側などの空気の流れは一層悪くなり、湿気が好む壁面や角にカビが生えてしまい、衣服だけではなく壁紙、酷くなれば内部の構造にまで影響を及ぼしかねません。
◆パターン2
《キッチンやトイレが近くにあり、そちらで排気している》
この場合、湿気を含んだ空気の引っ張り合いが始まります。
これは一か八かの状態になり、ウォークインクローゼットの方に湿気が向かう可能性があります。つまり、予測ができないために「危険だ」と言うことです。
以上のような状況になり得るかもしれないと予測されませんか?このままでは湿気にやられてしまいますよね。
実際のところ、空気の動きは100%つかめるわけではありません。排気給気の考え方に加えて、温度による滞留もあります。もちろん人の動きによっても空気は流れます。
そういうことも踏まえると、
《ウォークインクローゼットを浴室近くに配置すると言うことは、危険が強い》
ということになります。
結論から言うと、この動線はリスクが高いので離れている方が安全だと言うことです。
しかしこの魅力的な動線計画、やっぱり取り入れたい!何か手はないの?
では、その手を考えてみましょう。
▼換気を考えてみて▲
もしも、それでもここがいい!と考えるのであれば、方法はひとつ。
『ウォークインクローゼットに、強い給気扇を設ける』ということです。
給気扇があることによってウォークインクローゼット内は、常に新鮮な空気を給気されているため、他からの気流を受け付けないという方法です。
家族の衣類や大事に閉まっておきたいものを守ることができます。これを設計担当に伝えて計画することが唯一の突破口になると考えます。
家づくりを考えるとき、空気の流れを読んでみる。
それだけで、起こりそうな問題を解決できますし、快適に暮らすことに繋げることができます。
今回解説した洗面・脱衣室~WICの話に限らず、キッチンの料理のにおいや、トイレについてなどを題材にしている記事もありますので是非ご覧になってみてくださいね。
ご参考になれば幸いです。